K-POPアルバム“400万枚時代”のカラクリ CDプレイヤーがなくても買う、実物を受け取らないファンも

COLUMN
Octavio Parra / Shutterstock.com

K-POPではいま、「100万枚」はもはや一部のトップグループだけの数字ではなくなっている。200万枚、300万枚、さらには400万枚を超える作品まで登場している。

2026年9月には、CORTIS(コルティス)の2nd EP『GREENGREEN』がCircle Chartで累計約410万枚を突破。今年発売されたK-POPアルバムで400万枚を超えたのは、BTS『ARIRANG』に続いて2作目となった。『GREENGREEN』は発売初週だけでもHanteo Chartで約231万枚を売り上げている。

Stray Kidsも8月発売の『THIS & THAT』が、Circle ChartでCD、FANS版、LPなどを合わせて約383万枚を記録した。

日本の感覚からすると、かなり驚く数字だ。日本レコード協会(RIAJ)では累計正味出荷100万枚以上を「ミリオン」と認定しているが、現在の日本ではCDが100万枚に到達すること自体が珍しい。ストリーミングが音楽消費の中心になったいま、「ミリオンセラー」は一部の強いファンダムを持つアーティストに限られるようになっている。

それなのに、なぜK-POPでは400万枚という数字まで出てくるのだろうか。

その答えを探っていくと、現在のK-POPアルバムは、かつて私たちがイメージしていた「音楽を聴くためのCD」とはかなり違う商品になっていることが見えてくる。

 

「400万枚=400万人が買った」ではない

まず確認しておきたいのは、400万枚という数字そのものが架空の数字ではないということだ。

Circle ChartのAlbum Chartは、CDやLP、USB、KiT、Platform Albumなどの出荷量から返品分を差し引いて集計している。つまり、ストリーミング再生回数をCD枚数に換算して「400万枚」と呼んでいるわけではない。実際にフィジカル商品として製造・流通した規模を示す数字だ。

ただし、「400万枚売れた」ということと「400万人が1枚ずつ買った」ということはまったく別である。K-POPでは一人のファンが同じアルバムを複数枚購入することが珍しくないうえ、販売先も韓国国内に限られない。日本、アメリカ、中国、東南アジア、ヨーロッパなど、世界中のファンが同じ作品を購入している。

400万枚という数字は、世界規模のファンダムと、一人あたりの複数購入が組み合わさって生まれている。

 

CDで音楽を聴くファンはわずか5.7%

では、K-POPファンは大量に買ったCDを実際に再生しているのだろうか。

韓国消費者院がK-POPのファンダム活動経験者500人を対象に行った調査では、83.8%が主に音源や動画のストリーミングで音楽を聴いていると回答した。一方、「CDを利用して音楽を聴く」と答えた人は、わずか5.7%だった。

つまり、多くのファンにとってアルバム購入と音楽鑑賞は、すでに別の行為になっている。音楽はSpotifyやApple Music、YouTubeなどで聴く。それでもフィジカルアルバムは買う。なぜなら、現在のK-POPアルバムは単なるCDではなく、「ファン向けの商品」として作られているからだ。

 

K-POPアルバムは「CD+グッズ」のセット

K-POPアルバムを実際に手に取ると、日本の一般的なCDとはかなり印象が違う。CDだけでなく、フォトブック、フォトカード、ポストカード、ステッカー、IDカード、ポスターなど、さまざまなアイテムが同梱されている。

韓国消費者院が販売量の多いK-POPアルバム50作品を調査したところ、1商品あたりに含まれるグッズは平均7.8個。さらに調査対象商品の96.9%にランダムフォトカードが含まれていた。

同じアルバムでも、写真やパッケージが異なる複数バージョンが発売されることも多い。たとえばStray Kids『THIS & THAT』はアメリカで、THIS VER.、THAT VER.、TRUCK VER.、メンバー別仕様の商品、サイン入り商品、さらに小売店限定盤やLPなど、さまざまな形態で販売されている。

中に入っている音楽は同じでも、「商品」として見ればそれぞれ違う。ここに、同じアルバムを複数枚購入する理由が生まれる。

 

【動画】Stray Kids『THIS & THAT』Target限定盤の中身をチェック

 

なぜ同じアルバムを何枚も買うのか

複数購入を促す大きな要素のひとつが、ランダムフォトカードだ。

たとえば8人組のグループで、8種類のフォトカードから1枚だけがランダムに封入されている場合、アルバムを1枚買っても自分が好きなメンバーのカードが入っているとは限らない。推しのカードが欲しい、あるいは全種類を集めたいとなれば、2枚、3枚と購入する動機が生まれる。

韓国消費者院の調査では、ランダムグッズを目的にアルバムを購入した経験がある人は、同じアルバムを平均4.1枚購入していた。

さらに販売店によって異なる限定フォトカードが用意されることもある。公式ショップで買えばこのカード、量販店で買えば別のカード、といった形で、欲しい特典によって購入先まで変わる。

 

【動画】どのフォトカードが出る? Target限定盤を開封

 

そして、さらに複数購入を強く促すのが、ファンサイン会やオンライン通話イベントだ。

アルバム1枚の購入につき1口応募できる仕組みの場合、当選確率を上げるために何十枚も購入するファンが出てくる。音楽やアルバム本体そのものが欲しいというより、「応募口数」を増やすことが購入の目的になるケースもある。

その結果、海外メディアでは、イベント応募のために大量購入した際、購入者がCDそのものを配送してもらわないことを選べる販売方法まで紹介されている。料金を支払い、購入実績や応募口数は得るものの、大量のCDは手元に送られてこないという仕組みだ。

ここまで来ると、CDは「音楽を聴くための商品」というより、イベント参加やファンダム活動のための仕組みの一部になっていることがわかる。

 

1人で「90枚」購入した例も

実際、かなり極端なケースも確認されている。

韓国消費者院の調査では、ランダムグッズを目的に同じアルバムを購入した人の平均は4.1枚だったが、最多では一人で90枚購入したケースがあった。さらにイベント応募目的では平均6.7枚で、最多では80枚を購入した人もいた。

別の消費者相談事例では、フォトカードを得るためにアルバムを80枚購入し、17万6000円を支払ったケースも紹介されている。

もちろん、ほとんどのファンが80枚、90枚を買っているわけではない。しかし、アルバム販売枚数と購入者数が一致しないことを理解するには象徴的な例だ。

仮に10万人のファンが平均10枚ずつ購入すれば、それだけで100万枚になる。実際には一枚だけ買うファンもいれば、数枚、数十枚買うファンもいる。それらをすべて合わせた数字が「アルバム販売枚数」になる。

 

世界中のファンが買うことで数百万枚へ

もう一つ重要なのが、K-POPのアルバム市場が韓国国内だけで成立しているわけではないことだ。

韓国からの音盤輸出はアメリカ、中国、日本を中心に世界各国へ広がっており、ヨーロッパや台湾、東南アジアにも大きな市場がある。K-POPのフィジカルセールスは、韓国人が大量にCDを買って作っている数字というより、世界各地のファンダムをひとつにまとめたグローバル市場の数字と考えたほうが実態に近い。

つまり「韓国ではCDが400万枚も売れる」というより、「韓国の音楽会社が世界中のファンに向けて、400万個規模のアルバム商品を販売している」と考えるほうがわかりやすい。

 

「音楽を買う」から「推しを買う」へ

こうして見ると、K-POPアルバムがなぜ数百万枚も売れるのかが少し見えてくる。

現在のK-POPでは、音楽を聴くことと、アルバムを所有すること、フォトカードを集めること、推しのバージョンを揃えること、限定特典を手に入れること、イベントに応募することが、それぞれ別々の消費行動になっている。

かつてCDを買う最大の理由は「その音楽を聴くため」だった。しかし現在のK-POPでは、音楽を聴くだけならストリーミングで十分だ。それでもフィジカルアルバムが売れ続けるのは、アルバムそのものがファンダム文化を楽しむための商品になっているからだ。

韓国消費者院の調査でも、52.7%が「グッズ収集」を目的にアルバムを購入した経験があると回答している。CDは商品の中心というより、数ある構成物のひとつになりつつあるとも言える。

 

それでも「400万枚」はやはりすごい

ここまで読むと、「では400万枚という数字には意味がないのか」と思うかもしれない。もちろん、そうではない。

400万枚規模の商品を実際に製造し、世界各国に流通させ、それだけの購入を生み出せること自体、非常に強力なファンダムが存在する証拠だ。CORTIS『GREENGREEN』が約410万枚に到達したことも、BTS『ARIRANG』が同じく400万枚を超えたことも、現在のK-POP市場における大きな実績であることに変わりはない。

ただし、その数字を昔の日本の「ミリオンセラー」とまったく同じ感覚で受け取ると、実態を見誤る。

現在のK-POPのアルバムセールスは、

世界規模のファンダム × 複数バージョン × ランダム特典 × イベント応募 × 一人あたりの複数購入

によって作られている。

「400万枚売れた」は事実。しかし、それは必ずしも「400万人がCDを買い、400万人がそのCDで音楽を聴いた」という意味ではない。

CDプレイヤーを持っていなくてもアルバムを買う。場合によっては、購入してもCDそのものを受け取らない。

音楽はストリーミングで聴き、フィジカルアルバムは推しを応援し、集め、イベントに参加し、ファンダムを楽しむために購入する。

K-POPの“400万枚時代”は、CDが再び音楽を聴く道具として復活したのではなく、CDアルバムそのものの役割が大きく変わったことで生まれた現象なのかもしれない。

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